Pairsの「安心・安全/セキュリティ対策と最新動向」 〜マッチングアプリを悪用したロマンス詐欺、投資詐欺への対応等〜 オンラインメディアセミナーを開催

2022年10月でサービス開始10周年を迎える、国内最大級の恋活・婚活マッチングアプリ「Pairs」(ペアーズ)を運営する株式会社エウレカ(本社: 東京都港区、代表取締役CEO: 石橋準也)は、2022年7月5日(火)に、Pairsの「安心・安全/セキュリティ対策と最新動向」と題したオンラインメディアセミナーを開催しました。※出典:data.ai 2021年1月~12月

 本セミナーは2部制で構成され、第1部では、エウレカ代表取締役CEOの石橋準也から、1)プラットフォームとしての安心・安全環境の整備、2)ユーザーへの注意喚起や啓発、3)業界・公的機関・有識者との連携、の3つの柱から成るPairsの「安心・安全/セキュリティ対策の取り組みと最新動向」について説明を行いました。

    第2部では、外部有識者として、曽我部真裕氏(京都大学大学院法学研究科教授)、尾花紀子氏(ネット教育アナリスト)、森透匡氏(一般社団法人 日本刑事技術協会代表理事/元警部)の3名をお迎えし、エウレカ取締役CPO 泉宏和とともに、「安心・安全をめぐる今後の課題とPairsが目指すもの」をテーマに、1)マッチングアプリのメリットと安心・安全対策、2)プライバシーと安心・安全対策の難しさ、3)安心・安全の今後〜テクノロジーの進化と協働の3つのテーマに分けて、トークセッションを実施しました。

第2部: トークセッション「安心・安全をめぐる今後の課題とPairsが目指すもの」概要

トークテーマ1:マッチングアプリのメリットと安心・安全対策

トークテーマ1では、安心・安全対策について語る上で、Pairsのカスタマーケアに寄せられる問い合わせを紹介。大半が使い方や退会に関するもので、違反報告は1割程度ですが、違反報告の中でも悪質利用者と思われるものが増える傾向にあり、2021年は58.6%と半数以上を占め、前年度比26%増となっています。こうした動向も踏まえて有識者の皆様にご意見を頂きました。

森氏:「警察にいた当時からネット犯罪はありましたが、相談を受けても組織的で、海外を拠点にしている犯罪が多く日本の捜査権が及ばないことから捜査が難しく、警察としても対応をどうすべきか頭を悩ませている状況です。こういった状況では、事業者だけで完全にネット犯罪や悪質利用をブロックするのは厳しいのではないかと考えています。」

泉:「この1年から1年半、組織的な悪質利用者が増えていることを実感しています。Pairsとしても従来からAI技術や人の目による監視を通して対応を行っており、昨年7月には日本国外からの利用を制限することで海外拠点の組織への対応を行っています。」

曽我部氏:「マッチングアプリも広い意味でSNSの一つです。SNSの強みは離れている人々を結び付けることだと考えています。ただ様々な人がいるということは、悪い人もいるということになります。その中でも特にロマンス詐欺は、経済的被害だけでなく、精神的なダメージも大きく、対策が重要と考えています。ただ限界もあると思います。一つは、ユーザーが多様であるため、規制を強めると多様な人が集まらなくなってしまいます。つまり、『自由な利用』と『安心・安全のバランス』が重要となってきます。二つ目は、いつかはリアルな交際につながるため、アプリ外での接触が必要となり、マッチングアプリ内の管理が及ばなくなることが課題と考えています。」

尾花氏:「インターネットが世の中に出てきてからずっと言い続けていることですが『人の多い所には、悪い人も集まる。誰もいないところには悪い人も集まらない』。つまり、みんなが使っている、人気があるサービス・アプリだから安心ということではなく、悪い人も集まっているので、人気があるサービス・アプリはそれだけの安全性を担保する仕組みがなければならないと考えています。ユーザー側も『多くの利用者にとって便利な道具は、悪い人にとっても便利な道具である』と認識し、危機管理意識を持つ必要があると思います。

Pairsも大変努力しており、AIや目視による監視などをやられていますが、大手SNSやオンラインゲームでも同じような対応をしています。ただ、会員数から察するにオンライン上でコミュニケーション量は膨大で、どれだけ頑張っても目視には限界があります。AIをうまく活用し、最終的なジャッジを人が行うというやり方は正解で、人的判断のタイミングやクオリティが安全性のカギであると考えています。

内閣府が6月に公表した『男女共同参画白書』における若者の恋愛状況から、野田聖子大臣がオンラインを使った出会いの場の提供といった点に触れていましたが、新型コロナウイルスの影響で人と出会う機会が減り、大学やオフィスでのリアルなコミュニケーションも減っています。そのためマッチングアプリをうまく利用するという選択肢はあると思っています。娘また、結婚を考える年齢の子どもを持つ親の立場としては、こうしたアプリ・サービスが安全だという保証みたいなものがあれば安心できると思います。」

 

トークテーマ2:プライバシーと安心・安全対策の難しさ

エウレカは事業者として安心・安全対策を強化していますが、さらに対策を強化していくためには、本人確認のための個人情報の取得や、各個人のプライバシーの監視を強化する必要もあるため、そのバランスをどう考えるかが難しい課題でもあります。この点について有識者の方々にご意見を頂きました。

泉:「Pairsとして、ユーザーへの安心・安全を確保する部分と、そのためにどれだけモニタリングし、データを提供してもらい、きちんとチェックするかが難しいところです。データを提供してもらいすぎてもどこまでが有益な情報なのか、ユーザーに安心にしてもらうにはどこまで必要なのか、モニタリングがどこまで必要なのかを悩んでいる状況です。」

曽我部氏:「一般的なSNSでも、自由度と安心・安全との両立には大変苦労しています。マッチングアプリは、集まっている人たちが安心・安全を重視しているため、安心・安全に寄った運用が良いと考えています。プライバシーに関しては、ユーザー理解は大前提ではあるものの、比較的厚めに収集する必要があると思います。アプリ外の情報についてはどこまで集める必要があるかは、難しいところではありますがアプリの中の振る舞いについては深堀りしてモニタリングすることは可能であると思います。この情報によって安心・安全が実現できているとユーザーが確認できるような透明性や信頼を確保することで、ユーザー理解を得られるため、信頼を確保した上でプライバシー情報を利用していくべきでしょう。」

尾花氏:「事業者が本人確認のためにどれぐらいの情報を取得すべきかという議論に加え、自身がユーザー同士で公開するプライバシー情報に関しては、自分の登録情報は少ない方が安心でき、一方、相手側の情報は多い方が安心できると考えがちだという点も考慮すべきです。プライバシー情報は、多ければ良いかというとそうでもありません。多すぎると、誰も選べなくなってしまう可能性もあります。ですから、さまざまなプライバシー情報を提供してもらうものの、その開示に関しては段階的に行う方法が有効ではないかと考えます。最初の段階ですべての情報を開示するのではなく、通常は必要最低限のプロフィール情報でやり取りし、もう一段階先に進もうという時点でより深い情報を開示するというように、二~三段階に分けて開示する方法です。登録情報が段階的に開示される旨を明示すれば、不安が軽減し、安心を提供できるのではないでしょうか。」

森氏:「元警察の観点から言うと、詐欺事件は検挙が大きな抑止効果になります。情報が多いほど検挙の可能性は高まります。事業者として、個人情報を出しにくいところはあると思いますが、何かあった時のためにできるだけ情報を登録してもらえるとありがたいなと思います。詐欺などの犯罪事件などが起きた場合、警察の照会にはPairsとして対応しているのでしょうか?」

泉:「はい、プライバシー保護の観点は重要視しながら、警察からの照会に必要な情報提供など全面的に協力しております。」

 

トークテーマ3:安心・安全の今後〜テクノロジーの進化と協働

Pairsユーザーに対して、Pairsが行なっている安心・安全対策に関する認知度と期待について調査しました。調査の結果、想定以上にPairsが行っている対策が知られていないことがわかりました。一方で悪質利用者を食い止める施策をユーザーが求めていることもわかりました。Pairsが実施している対策に関する情報提供も含めて、ユーザー啓発やリテラシー向上の重要性、さらに、一事業者だけでは解決できない課題もあることから、公的機関や外部有識者との協働の必要性について、有識者と意見を交わしました。

森氏:「犯罪者は本当に悪知恵が働きます。犯罪者は常に犯罪の手口を進歩させています。騙されないようにするために、Pairsもかなり多くの対策をしていていますが、一事業者だけでは対策が難しいところもあります。例えばサービスに利用登録をするときの本人確認において、提出された書類が正しいものであるかを国が認証することで犯罪の抑止に繋げられると思います。

泉:Match Groupのノウハウはとても有益です。Match Groupは欧米含め世界各国でサービスを提供しているため、それぞれのサービスにおける悪質組織や悪質ユーザーのデータを共有することができます。例えばどんな偽の写真を使うのか、どんな行動をするのかといった情報やその傾向を共有しており、それはPairsとして利点でもあり、ユーザーとしても利点です。

悪質利用者は国や法律の制約なく、行動する人たちであり、技術力も高い人たちです。具体的な対策を公にすると、それに対する対応を悪質利用者側も考えるなど、終わらない闘いですが、グローバルの観点でも、Pairs単体でも、資金投資はもちろん、AI技術と人による監視の両輪を持つ体制を、これからも強化したいと思っています。ただおっしゃるように、一事業者だけでは解決できない課題はあります。」

曽我部氏:「外部との連携とユーザー啓発が重要なポイントだと考えています。外部との連携に関しては行政との連携が重要です。独身証明書、本人確認のデジタル化といったテクノロジーの導入を進めることによって、独身証明書などを備えるユーザーが増えて、安心・安全につながると考えます。また行政との連携はマッチングアプリ全体の信頼性を高める意味でも重要です。少子化対策、孤独・孤立対策にもマッチングアプリが有効な働きをしていることは、社会課題の解決の一助になるでしょう。

ユーザー啓発については、一般的な啓発は限界があると思います。何も問題がないときには気にしていないのは人の常。リスクがありそうな行動をした時に、場面に応じた啓発を行うことが、技術的にはできるはずです。何度も啓発のアテンションがあると、使いにくくなるかもしれませんが、ここぞというときに啓発動画やページを出すことによって、被害を軽減できると思います。」

尾花氏:「悪質利用者によるトラブルはアプリ外で起きます。一定期間はアプリ外ではコミュニケーションをしない、というチェック項目などがあれば、アプリ外の連絡を断りやすくなるのではないかと思います。ユーザーの観点からすると、相手に好意を持ち始めた時にアプリ外でのコミュニケ-ションを求められたら、断ること、拒絶をすることは難しいと思います。そのためアプリ外コミュニケーションについて自己申告できる仕組みを作っておくなど、ユーザー目線で実効性をあげる工夫も必要ではないかと思います。」

 


<本件に関するお問い合わせ先>
株式会社エウレカ広報部 
pr@eure.jp